焙煎のこと

熱伝導率

 常温に放置された木に触れてもそれほど冷たいとは感じないと思いますが、鉄などの金属に触れるととても冷たく感じたりします。
 

 冷たいと感じるのは、手のひらから触れた物へと熱が移動して(体温が奪われて)しまうからです。

 金属のように、それがスムーズに行われる物質ほど熱伝導率が高いといえます。

 
 

 また、温度や状態の変化によっても熱伝導率は違ってきます。
 
 空気は、温度が高くなるにつれて熱伝導率が高くなるのに対し、豆などの絶縁体は低くなり、金属も低くなる場合が多いようです。

 物質の中に空気の層ができた場合も熱伝導率は低くなると考えられます。

 空気の場合は気圧(密度)でも変わってきます。



感覚

 感覚には、本能的なものの他、経験により身に付いてくるものがあると思います。

 焙煎では、熱風を操る感覚がそれに当たるのではないでしょうか。
 

 効率の良い熱風を作るためにはガスと空気のバランスをうまく取らなければならないのですが、ガスも空気も気体であり、それらによって作られる熱風も気体なので温度や圧力、湿度等により少し性質が変わってきます。

 また、豆という対象があるので、その状態に応じた効率の良い熱風を与える必要があります。微妙な部分が多く、無理や無駄は焦げや雑味となってあらわれてきます。
  
 そのような感覚は、長年の経験や研鑽により身に付き、磨かれていくものだと思います。

 「焙煎すること」 「感じること」 「考えること」 日々これらの繰り返しが大切なのだと思います。
 



ガス圧

 生豆を焙煎するときに必要な物質は、空気とガスになります。
 それらの状態は季節や天気によって変化し、考えさせられることが多くあります。

 今回は、ガスの圧力について考えてみたいと思います。
 
 まずは、カセット式のガスコンロを例に挙げてみます。

 温かいところでは全く問題なく使えるガスコンロですが、寒い場所では使っているうちに火力が弱まってくることがよくあると思います。ガスを最後まで使いきれないということも少なくありません。

 カセットコンロにはブタンというガスが使われています。
 ブタンが気化する温度は0℃位、プロパンの-42℃位に比べるとずいぶんと高い温度です。

  気温が低いほど気化する力が弱まり、気温が気化する温度(0℃)よりも低くなると着火することもできません。

 気化する力が弱くなるということは、ボンベ内の内圧が低くなるということで、ガスを吹き出す威力が少なくなります。
 冬場など、このようなことがおこっているのがカセットコンロではよく分かります。
 

 ここまで極端ではありませんが、同じようなこと(気温が下がるとボンベの内圧が下がる)がプロパンでもおこっていることになります。

 プロパンの沸点の低さやレギュレーターが付いていることを考えるとそれほど気にしなくてもよいかもしれませんが、状況によってはガスが安定しなかったり弱くなったりという場合もあるのではないかと思います。



熱エネルギー

 夏、暑いときに水をまくと少し涼しくなりますが、これは水自体が空気の温度を下げているというよりも気化熱を利用して行っているものらしいです。
 
 気化熱は物質を気体に変化させるために必要なエネルギーといわれています。

 液体が気体に変わるときには気化熱が必要となり、その熱が空気や地面から奪われて温度が下がるという仕組みです。

 物質が気体に変化する気化というものは、焙煎中にもおこっています。
 例えば、①水の気化(豆の水分が気化するとき) ②液化ガスの気化(プロパンの場合)

 ①は焙煎をしているとよく感じ取ることができます。豆によって温度の上昇の仕方が違うのはここら辺の影響が大きいのではと思います。

 ②はプロパンのボンベの中に入っている圧縮された液化ガスが気化するということです。気化にはある程度の温度が必要となるわけですが、プロパンガスの沸点は−42.09 ℃なので、-50℃以下にもなる南極では気化しないことがあっても日本でそのような心配はないことと思います。

 注目したいところは気化後の温度変化です。
 気化直後のガスは−42.09 ℃ということになるので空気との温度差は40℃~70℃もあることになります。
 気化後、温度差による熱エネルギーの移動がどれだけあるかは気温やボンベからの距離など様々な条件により変わってきます。ガスも空気同様気体であり、温度が変わるとボイルシャルルの法則により体積も変化します。
 モル自体は変わらないので体積が変わると濃さも変わることになります。

 ガスは、正確に計算するのは難しいとも聞きました。ガスの濃さの変化を正確に求めることも難しいと思います。

 しかし、ガスに限らず温度差が生じるところには熱エネルギーの移動があり、焙煎しているときはそれがいたるところでおこっているわけで、それらを完全に計算することは不可能なことではあるのですが、それらをある程度イメージすることは可能なことではないかと思います。



コーヒーへの取り組み

 天気予報では明日から雪が降ったりと寒くなるようです。暖かいまま冬が過ぎてくれたらいいのにと思っていたのですがそうはいかないようです。

 焙煎をやっているとどうしても天候の変化が気になってしまいます。

 気温や風、雨などの影響で焙煎時のカロリーや排気などがずれてきますが、その少しの違いがコーヒーの味にかなりの影響を与えてしまう場合もあります。

 焙煎は、排気の調節をしながら熱を加えるという単純な作業のように見えますが、結構繊細なもののように思います。

 本気で取り組めば取り組むほど、難しいものかもしれません。

 高級豆を使い、鮮度のよいものを販売するというのが自家焙煎では当たり前のようになってきている今、価格以上の味を作り出すためには焙煎への取り組みかたとかハンドピックなど消費者の目に見えない部分をどれだけ丁寧に誠実に行っているかが重要になってくると思います。

 そうすると一日で作れる量も限られてきてたくさんのコーヒーを売ることはできないのですが、普通のコーヒーをたくさん売るよりも、美味しいと思えるコーヒーを私のコーヒーを気に入ってくださる方に飲んで頂ければ嬉しく思います。

 販売店経由などではなく、手渡しであったり、直接郵送したり、お客様との距離が近いことはとても大切なことだと思っています。



珈音の焙煎機について

 コーヒーの生豆は農作物なので野菜などと同じように素材の品質はかなり重要なものです。

 しかし、皆様が普段目にする焦げ茶色のコーヒー豆になるためには焙煎という加工が必要となります。

 素材の良さを引き出すも失わせるも焙煎次第ということができます。

 焙煎機には、大手で使われる大型の焙煎機、個人経営の自家焙煎店が扱う3キロから5キロ位のものからサンプルを焙煎したり趣味で使う500グラム程度のものなどいろいろあります。(焙煎機の種類

 富士ローヤル3キロ直火焙煎機
 珈音で使用している焙煎機は、3キロ直火式焙煎機です。
 少量から3キロまでの生豆を焙煎することができますが、珈音ではもっとも仕上がりの良くなる適度な分量で焙煎しています。
 焙煎により2割ほど軽くなり、さらに仕上げのハンドピックを行うので、できあがった時の重さは結構減っています。

 この焙煎機は、直火で味にこだわって少量ずつ丁寧に焼き上げるという私の目的に適しています。とても気に入っています。

 コーヒーの生豆は堅く水分を多く含んでいて、焙煎時の外気の影響もずいぶん受けるので直火でうまく焼き上げるには操作する技術だけではなく、物理的なことや化学的なことなどいろいろな知識が必要となってきます。

 焙煎には特にこだわりを持って取り組んでいます。



季節の変化

 今年は暖冬のようでまだ冬らしい日は少ないです。

 でも、先週は急に寒くなり、雪も降りました。

 季節が変わると空気も変わってしまいます。

 コーヒーの焙煎の恐ろしい所は、このような季節の変化や天候などの影響をかなり受けてしまうことです。

 温度の低い空気と高い空気では、膨張したときの体積の変化や水分の含有量などが異なってきます。

 空気の質が違うと、全く同じように焙煎をしても同じ味にはならないというのが直火焙煎の難しいところです。

 焙煎機のセッティングに相当苦労しましたが、何とか対応できそうです。

 どんな季節でもおいしいコーヒーを作るにはしっかりとデータを取り、焙煎コーントロールを磨くしかないようです。

 そういったことを考えるとコーヒーの焙煎はなかなか難しいものかもしれませんが、おいしいコーヒーを作るために頑張っていきます。